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“頭の硬い”祖父から引き継いだ、 “頭の柔らかい”夫婦の米づくり

“頭の硬い”祖父から引き継いだ、
“頭の柔らかい”夫婦の米づくり

祖父の土地を借りながら稲作を始め、2014年より法人化したカトウファームの加藤ご夫妻。現在4人のお子さんを育てながら、50haの田んぼを作付けし10年後には100haを目指している。「稲作はもちろん、人材育成に力を入れたい」と語る社長の晃司さんに、これまでの活動とこれからの未来について伺った。

加藤晃司|KOJI KATO

1979年、福島県生まれ。
農業生産法人株式会社カトウファーム 代表取締役。流通経済大経済学部卒業。
2008年から福島市の北部地区で、稲作の専業農家をしていた祖父の土地の一部を継承し就農。2011年の東日本大震災が影響し、近隣就農者の高齢化が加速。「このままではいけない」と奮起し、2016年株式会社カトウファームを設立した。2017年には、稲でGGAPを取得し、JGAP指導員としても活動している。現在では稲作の他にも大麦やホップを使用し、自社で醸造所を構え発泡酒を醸造しようと取り組むなど、地域貢献と農業を組み合わせながら、10年後には100haの農地拡大を目指し、日々挑戦し続けている。

サラリーマンを経て、お米づくりの世界へ

建築関係の仕事でサラリーマンをしていた加藤晃司さんは、祖父の土地で稲作をはじめて多くの苦悩を経験している。お互いの価値観の違いから祖父に「農業やめろ!」とまで言われたそうだ。夫婦で福島県福島市で環境を変え、未経験のチャレンジから農業法人に至るまでの経緯を伺った。

──2014年から法人化されたということですが、法人化するまでの経緯を教えてください。

加藤晃司さん(以下、晃司さん):就農前は、建設業でサラリーマンとして働いていました。その時は祖父の作業を手伝うくらいでしたが、会社を辞めたかったこともあって「稲を仕事としてやっていきたい」と家族に相談したんです。反対されると思ったら妻からも「やろうよ!」と賛同してくれて、2009年から祖父の土地を借りてスタートすることができました。でも、祖父は「俺が絶対! 俺がルールだ!」という奇抜な人でしたので(笑)、最初は苦労は多かったですが、自分で模索しながら栽培方法を変えていきました。祖父が手掛けた農地よりも量や質も上がってきた頃ぐらいから関係が拗れ始めました。祖父はこれまでの経験もあるし、自分の利益を奪われるような感覚があったのだと思っています。 今は亡くなってしまったから真相は聞けませんが、もしかしたら進化していく姿が悔しかったのかもしれないですね。始めたばかりなのに「もう農業やめろ!」とまで言われましたから。

ただ、最後は喧嘩ばかりしておりましたが、祖父がいなかったら我々もここまでできなかったと思うと、今ではとても感謝をしています。

──かなりご苦労されたんですね。新しい世代と意見や価値観がぶつかることで悩まれている方も多いと思います。法人化への反対はされませんでしたか?

晃司さん:祖父や法人化していないまわりの農家さん達からはかなり反対されました。でも、設備投資をするにも資金調達するにも法人化しないと安心できませんからね。私自身は祖父に借金をするようにいわれお金を出したこともありました。だから、身内で保証人や子供や孫の名義を借りながら設備投資をしなければならないのが嫌だったんだと思います。2014年、法人化に踏み込みました。

──なるほど。実際に法人化して、いかがでしたか?

晃司さん:法人化したことで、銀行さんも私たちの将来性や思いを汲んでくれたので正解でした。将来的に継続可能な農業をしていくためには、法人化して、銀行から借り入れをして返していく方が安心ですし、借り入れの額も今の規模を考えれば、返せない金額ではないとポジティブに考えています。

 

 

加藤絵美|EMI KATO

1981年、福島県生まれ。
農業生産法人株式会社カトウファームの専務取締役で、代表の妻、そして三男一女の母。
別の仕事をしていたが、2009年就農する。今ではJGAP指導員、お米アドバイザーの資格を取得し、農作業以外にも国内外で「おにぎり」のイベントを企画・実施したり、農水省食糧部会委員・農業女子PJのメンバー、NPO法人田舎のヒロインズの理事と自称「フリースタイル農家」として幅広く活動している。今後は醸造と加工にも力を入れ、全国を”農業旅”しながら農に関わる人を増やし、地域を面白くするために活動している。

奥様の加藤絵美さんも、晃司さんと同じく農業未経験者。「都会で働くことに疲れちゃって」と笑顔で語ったが、環境を変え未知の世界へ飛び込むことは人生でも大きな転機となったはずだ。農業へシフトチェンジすることへ不安はなかったのだろうか。

──絵美さんは、以前から稲作には関わっていたのでしょうか?

加藤絵美さん(以下、絵美さん):元々一般企業で営業職をしていたのですが、もう社会に疲れてしまって。新しい環境に身を置くのもありかな? と農業へシフトチェンジしました。なので全くの素人です(笑)。主人から「水田環境鑑定士」という資格があるから勉強してきなよ〜って言われて、軽い気持ちで参加して、米づくりの1年の流れをそこで初めて知ったくらいの素人です。そこで出逢った人たちに色々と教えていただきながら、実際に始めてみたら楽しくて農業って楽しいなと感じました。農作業で”人間らしさ”を取り戻したような感覚になりました。

お米を売るより、”ごはん”で利益を得る

ほぼ素人の状態で始めた二人。これまでの道のりはそう簡単なものではなかった。茨の道を歩みながらも見つけた安定した収入があって「儲けられる」稲作への道は、どんなものだったのだろうか。

──お二人とも農業が性に合っていたのですね! 農業というと儲からないイメージがまだまだ強い業態です。工夫している取り組みがあれば教えてください。

絵美さん:お米を売るよりも、”ごはん”にすることで価値をつけて販売しています。

晃司さん:例えばおにぎりのようなお米の加工品を作って、販売単価をあげています。元々建築の仕事をしていたので、使っていた倉庫を改築して、保健所の審査をクリアした上で、お米の加工品を生産・販売する場所を作りました。

──お米よりごはんで勝負ということですね。

絵美さん:国内はもちろん、海外などでもおにぎりを握って販売しています。パリでおにぎりの実演販売をしたり、先日も都内で行われたイベントに参加させてもらって、うちのお米を使ったおにぎりを販売させていただきました。

晃司さん:米のブランドで言うと、福島市の土地は新潟魚沼産には勝てないんですよね。天候や土地の条件と、この土地に根付いているものはどう頑張っても人力でできることではないので、仕方ない。嘆いていても変わりませんから(笑)。

 

 

頭が硬くなったら辞める!? 進化する農業に柔軟に対応したい

2011年の東日本大震災では大きな困難も経験した。そんな中でも前に進む力を与えてくれたのは、お金の支援よりも地域を超えた「人」という財産だった。彼らにはこれからの稲作の未来は、どう映っているのだろうか。

 

──いろんな苦労があると思うのですが、一番大変だったことを教えてください。

晃司さん:毎年想定外が起こるんですよ。なので毎年大変です。でも、失敗を失敗のままにしないことが一番大切だと思います。

絵美さん:震災も経験して、もちろん大変だったこともいっぱいあったけど、いろんな人と出逢うことが出来たのは財産だと思っています。農業を始めて、1年くらいで震災が来たので、やっとこれからという時でもありましたが、全国で応援してくれた人がいたのは心の支えになりました。

晃司さん:とにかく「人」に恵まれたと思います。この福島という土地への思いもたくさんの人と出逢って、実感できた部分も大きい。「よし! 儲けてやろう!」という利益追求も大切ですけど、それと同じくらい人に感謝して、土地に感謝しながら、新たに「人」や「地域」に還元できる経営をしていければ、苦労も苦労じゃないような気持ちが湧いてきます。

 ──お二人は、お米づくりに未来を感じていますか?

絵美さん:感じています。稲作に関わる人口が圧倒的に少ないのが理由のひとつにありますが、耕作面積を広げていくことで、農業経営のベースができて割にあった稲作ができるので。効率よく考えながら経営することができれば、時間も体力も余力が生まれるので新しいことへの挑戦もできると思います。もしお米ではなく野菜を作っていたら、管理も大変だったし、計画的に耕作面積を広げることも簡単にはできないので、今のようなチャレンジは出来なかったと思いますね。現状「稲作が難しい」と言われている福島県の中で、工夫しながら経営できているので、ライバルが少ない分、農地を広げていくことで、同じ労力で利益を増やしていけると考えています。

晃司さん:お米だったからというのは大きいですね。実はその余力を使って、今年からは”ビールづくり”にも挑戦しようと思っているんです。これも「人」との出会いがなければ実現できないことですが、今から楽しみです。

 

今年から始める発泡酒の工房

──それでは最後に、これから進めていきたいこと、考えていることを教えてください。

絵美さん:みんな悩みながら農業経営をしていると思います。同じ面積でも、土地や環境によって育つ作物の質や量は変わります。経済的にも精神的にも行き詰まる人はたくさんいると思うので、そういう悩みを地域をこえて話せる「場」を作りたいと思っています。未来に残し、繋げる稲作の方法を真剣に考えていきたいですね。

晃司さん:今は、同じ地域で稲作をするライバルが少ないので、農地を計画的に拡大していけばしっかり利益は得られると思うし、将来性は感じています。けれど、自分たちだけでその利益を得ようという考え方は全然なくて、人材育成もしていきたいし、年間安定雇用ができるような体制も整えたいと思っています。農業に今必要なのは、柔軟に考えられる頭の柔らかさだと思っています。祖父みたいに頑固になってしまったら自分は、農業を辞めると宣言してますから(笑)。

編集後記

そもそも稲作には不向きと言われる土地で様々な困難に直面しながらも、日々工夫を繰り返しながら稲作と向いあう彼らは、どんな困難も”楽しく”語っているように感じた。未経験からの農業、法人化、新事業、人材育成……と、一見すると苦労話になってしまう話題も、挑戦し続ける彼らだからこそ前向きに楽しめているのだろう。彼らの未来はきっと明るい、そんな希望を教えてくれた取材だった。

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